きろへると「がん」

※アイキャッチの画像は本記事とは全く関係ありません

きろへるは40歳の時に「腎臓がん」を患い、手術しました。
経過は良好で、その後の観察でも再発や転移は見つからず、お腹の手術痕だけ残っている感じです。

私の親類はがんに罹った方がちらほらおり、亡くなった方もいますが元気で存命の方もいます。
それもあって、家族も比較的冷静でいてくれたような気がします。

このお話が誰かの役に立つかどうか分かりませんが、こういうヤツもいるのだなと書き残しておきます。

きろへるにとっての「がん」という病気

自分ががんに罹る前、自分にとっては「父親の胃がん」が一番身近なものでした。

当時の父親は40代半ば。私は社会人2~3年目だったと思います。
ある日、実家の母から電話がありました。「父親に胃がんが見つかった」と。
「ごく初期のものであるため、恐らく手術で完全に取り除くことができるだろう」とのことでした。

当時の私には「がんの知識」はほぼなくて、「それなりに死んでしまう病気」という認識でしたので、母親の「おそらく大丈夫」を認識してはいたものの、「もしかしたら父親は死んでしまうかもしれない」と父親の死を実感した記憶があります。

その後、父親の手術は無事に成功し、今も元気にしています。
ごく初期とのことでしたが、胃の2/3を摘出することになり(当時、最低でもこの程度は切除する必要があったようです)、酒好きな父親が酒とつまみがほとんど楽しめない状態になりました。
と言っても予後がどうとかいう話ではなく、胃が小さくなったので飲み食いの量が減ったことと、アルコールの回りが早くなったということでした。

ただ、油もの、乳製品が食べられなくなりました。
消化の問題のようで、気分が悪くなるそうです。

ただ、2~3年もすると、腸の一部が胃の役割を担うようになったみたいで、食事の量も酒の量も元の通りに戻りましたし、こういう父親の姿を見ていたので、「闘病」というイメージもわかず、「がんって治るんだな」と自分の認識が改まりました。

父親からは、「自分は半年に1回、胃の検査をしていた。だから早期発見できた」と聞かされていたので、この頃から定期健康診断と、その後の精密検査の重要性は認識できたと思います。

ですのでこの頃から、私の「がん」に対する認識は「早期に治療すれば充分に治癒できる病気」になりました。

外部リンク がん情報サービス「胃がん」

結婚相手に「がん」の話

それから10年ほど経ち、私は今の家内と結婚しました。

結婚当時、お互いの両親・祖父母の話の中で、自分は「がん家系」であることを話し、いずれ自分も罹るだろうと根拠はない一方で何となく確信していた話をしました。上述の父親の話も含めて。

家内の近い親戚には「がん」に罹った方はいなかったようですが、特に盛り上がることなく淡々と話が終わったように思います。家内は病院関係の仕事をしているので、私よりも数倍がんに関する知識があったのかもしれません。

その後、私の親戚にがんの罹患が続きました。
叔母と祖母ががんでなくなり、祖父は手術して快復。やはり発見のタイミングが重要だということを夫婦で実感しました。

自分が腎臓がんになった話

その後、2人の子供に恵まれたある日、健康診断の結果に「要精密検査」というのがありました。
腹部エコーで「何かある」と。

ひとまず有休をとって、自宅近くの大きめな「Y病院」へ検査へ行きました。
ここは正直にいって「藪医者」の類で、まぁひどいものでした。あとで詳しく書きますが、、、

結果的に、この「藪医者」は3回のエコー検査ののち「腎臓がん」と診断しました。
過去の2回は「特になにもない」「だけどもう1回見せてくれ」と繰り返し、検査代もタダではないので勘弁してほしいとゲンナリしてました。

この時の私は自分が「腎臓がん」であることを確信していましたので、なおさら「藪医者」ぶりにあきれていたのですよね。

というのが、この頃の私は別の経過観察で定期的にエコー検査を受けていて(近所のほかの病院)、その検査の折に健康診断の内容をお話したところ、先生がいつもの4倍ほどの時間をかけて調べてくれ、「これはがんだね。悪性か良性かは分からないけれど、がんで間違いない」と理由と結論を、エコーの画像を私に見せながら説明してくれました。

先生曰く「水疱のようなものの中に血流がある」ことが、がんであることを確信した要因だそうです。
私は専門家ではないので、この説明が100%正しいかどうか分からないのですが、実際に私のお腹のエコー画像を見せながら丁寧に説明してくれたこと、数年来のお付き合いであることから、この先生のお話を聞いて「自分は腎臓がんに罹った」事実を認識し、受け入れました。

それと、その先生は健康診断で「何かある」と診断したのは凄いと驚いていました。
「医師か機械が凄い。小さすぎて、自分ならこの段階では気づかなかったと思う」と。
だから「藪医者」が見つけきれなかったことも「ある程度は仕方がない」との解説でした。

それでも「3回」はやりすぎです、、、先生。

外部リンク がん情報サービス「腎臓がん(腎細胞がん)」

「藪医者」の話 ※愚痴です

あきれた話ですが、私が「腎臓がん」であることを認識したことに「藪医者」はこれっぽっちも貢献していません。

それもあって、「藪医者」が3回目で「腎臓がん」だと診断した時には「さっさと手術したいんだけどな」とイライラしていたのですよね。

また、この「藪医者」がひどいもので、
・手術はこの病院ではなく、別の病院を紹介する。
・その病院は千葉県にあって、電車で片道3時間ほどかかる。
と言い始めました。

私は父親ががんに罹ったこともあり、手術後に経過観察が5年ほど必要であることを知っていました。
この「藪医者」は、経過観察に片道3時間の病院まで通え!と、とんでもない提案をしてきたのです。

「自分が考えている術式は、この病院でないとできない」などと尤もらしいことを言っていましたが、手術の内容は特別な設備が必要なものではなく、あとで調べると「腎臓がん」では一般的な手術方法でした。「藪医者」はそういう説明をしませんでしたが。

この時は知らなかったのですが、病院関係者である家内の意見としては、
・多分、その「藪医者」は手術が下手というか自信がないのかも?
・「自分の所属する派閥」の病院へ紹介して、派閥に対する点数稼ぎをしたいのかも?
ということでした。

この頃の私は「医師の皆さんは患者のことを第一に考えてくれるもの」と妄信しており、この家内の言葉に激しいショックを受けるとともに、「藪医者」の行動・言動に対して一定の納得感を得て、すべてが腑に落ちた=すっきりした気持ちになったものです。この後、医師を見る目が変わってしまいましたが、、、

ともかく、この「藪医者」が私のことを考えていないことをハッキリ認識したこともあり、「セカンドオピニオン」をやりたいことを告げ、「藪医者」との関係はそれまでとなりました。

この「藪医者」とのやり取りは自分の中に強く残っていて、その後は医師の説明や意見に対して自分の疑問や懸念をハッキリ伝え、医師の説明を自分なりに理解するようになりました。医師の皆さんからすると間違いなく「面倒な患者」だと思いますが、その後関わった医師は皆さん丁寧に説明をしてくださり、私もその医師を信じることができています。

本当に、この「藪医者」だけが私の人生で唯一の「藪医者」です。

結局、手術は自宅から車で30分の大きな病院でうけ、その後7年間経過観察に通いました。
7年も片道3時間の病院に通うところだったと思うと、本当にひどい目に遭うところでした。

経過観察の年数ですが、胃がんなど多くのものは「最低5年」だそうです。
ただ、腎臓がんは進行が遅いらしく「最低7年」と言われ、再発・転移がないかを確認しました。

信頼できる病院での手術

「セカンドオピニオン」でも医師から色々な説明をしてもらいました。
・一般的な術式で手術することになるので、希望の病院があるなら紹介状を書く
・わき腹を20cmほど切開する

そこで、私は2人目の子供を無事に取り上げてくれた「K病院」を希望し、紹介状を書いてもらいました。
素晴らしい設備と、家内曰く「厳しいけど優秀な医師が多い」という意見が記憶に残っていたのですよね。

そして、K病院で改めて検査をし、担当医から手術の内容を説明してもらいました。
すると、
・がんが小さいので、開腹せず内視鏡で手術する
・手術中に問題が発生したら、急遽開腹手術に切り替える可能性がある
・学生にも勉強させたいので、良ければ見学を許可してほしい
ということで、わき腹をバッサリ切らなくても良いかも?との提案をいただきました。
これにはビックリ。セカンドオピニオンでも聞けなかった選択肢です。

この時、担当医にいろいろ質問しましたが、すべて丁寧に説明してもらえました。
・がんが悪性か良性かは生体片を検査しないと分からない。
 どうしても希望するなら手術前に検査しても良いが、自分としてはそこまでする意義は薄いと思う。
・がんの大きさから言って、内視鏡手術で十分切除可能。
 手術後の回復も早いので、こだわりがないなら内視鏡手術を勧める。
・手術後の定期検査は最低7年は通うこと。
 「腎臓がん」は進行が遅いので、5年では短い。
 なお、当面は年4回の検査。数年後に経過が良好であれば年2回にする。
・色々気にしていると思うが、医師としては手術で怖いのは合併症(手術によって引き起こされる感染症など)。
 手術後に何か気になることがあったら、些細なことでも良いのですぐ教えてほしい。

外部リンク がん情報サービス「手術後のリスクと術後の合併症」

K病院は研究にも力を入れていると聞いていたので、良い病院に来たなぁとしみじみ感じました。
なので見学も含めて納得し、手術することにしました。

ちなみに、手術は半年後に設定することになりました。
私は「がんは大きくなるので、早い方が良い」と考えていたのですが、そんな私に担当医は「腎臓がんは進行が遅いので、半年先でもほとんど進行しない。充分内視鏡で手術できる」と断言し、急ぐ必要がないことを納得させてくれました。

そのおかげで、仕事の調整も十分でき、誰にも迷惑をかけない状況を作ることができたことには大変感謝しています。もちろん、担当医にもその後感謝は伝えましたよ。

その後、準備を整えて入院をし、手術に臨みました。手術時間は3時間ほど。
終わってみれば「こんなものか」と拍子抜けするくらいでした。無事に成功したので、これは手術関係者皆さんのおかげなのですが。

手術の翌日に担当医と話をした時には「あなた太りすぎ。手術そのものよりも、脂肪をかき分けるのが大変だった」とかなり本気で言われました。「痩せたご年配とあなたを比べたらわかるでしょ?」とも。
それがなければ、もう1時間ほど早く終わったそうです。

先生ごめんなさい。

当時考えていたこと

この時、私には家内と子供2人がいました。
子どもは1歳と0歳。

家内にはそれぞれの病院で説明を受けたことを、その時々に説明し、どうするのが良いか話しあいました。

私が「腎臓がん」であることを確信してからは、家内にもそのつもりで説明し、家内も特に取り乱すこともなく受け入れて、その後のことを一緒に考えてくれました。

その時考えていたことは、

1.万が一の時には自分は遠からず死ぬかもしれない。

ですが、私ががんで死亡した場合、経済的にはいくつかの保険がかかっていました。
・死亡保険・がん保険(そんなに大金はかけていませんが)
・住宅ローンの残債免除(当時は2000万円以上の残債務がありました)
・遺族年金(雀の涙です)

そして、家内には独身時代の貯金があると聞いていました。
当時、金額は知りませんでしたが、私が死んでしまっても路頭に迷うことはないとの結論に達しました。

2.家族の生活

私が手術・入院している間は、1歳と0歳の子供を家内1人で面倒を見ることになります。
が、それはとても大変なことであることはわかっていたので、私と家内それぞれの母へ協力を要請しました。
夫婦それぞれの両親に助けてもらう形で、私がいない間はそれぞれの母親が交代で我が家に寝泊まりすることになり、育児にもめどが立った状態で入院を迎えました。ここでも担当医に感謝です。

3.会社への影響

この時は手術+リハビリ期間は会社を休職しているのですが、その影響を少しだけ気にしていました。
というのも、この1年前に椎間板ヘルニアで緊急手術(別の記事で書きます)で仕事に穴をあけていまして。
ただ、命には代えられないので、ただ「気にしていた」だけです。
また、1年前と異なり、この時は準備期間がありました。なので会社に迷惑をかけない形で休職することができ、少なくとも「前回よりはマシ」と思うこともできました。担当医に感謝です。

このようなことを色々考えていましたが、周囲の理解や協力を得て、特に問題もなくリハビリ→退院となりました。

社会復帰

退院しても、すぐに社会復帰できるわけではありません。

お腹に傷があるので、関東の地獄の満員電車で通勤ができるかどうか?をとにかく気にしていました。
とはいえ、前年の椎間板ヘルニアでも同じような経験をしていたので、ある意味ノウハウはあります。

担当医のOKをもらったうえで、通勤電車にのって回復状況を見極めたうえで仕事へ復帰しました。

まぁ、私が気にしすぎているのかもしれませんが、2段階で確認しました。
①通勤ラッシュ時間をさけて、座って会社を往復
②通勤ラッシュの時間に、立って会社を往復(そもそも座れません)

担当医のOKが出ているので、そもそも問題はないのですが、関東の通勤ラッシュ時の全力おしくらまんじゅうに耐えられるかどうかは心配だったのです。まぁ、特に問題ありませんでしたが。

結局、2か月の休職期間ののち、会社へ復帰しました。
保険関係の手続きを取った以外は、特に何事もなく。

そして今

今現在も、実は経過観察の検査を続けています。

担当医に当初言われていた7年は過ぎているのですが、私の「がん家系である」という思いから、他のがんが見つかることもあるかも?ということで検査を続けることにしました。この考えは担当医にも家内にも伝えています。

おかげさまで、その後は何事もなく過ごしていますが、年々免疫力が低下していく年齢なので、忘れたころに次が来るのかもしれません。

ただ、自分にとって「がん」とは「早期に治療すれば充分に治癒できる病気」ですので、早い段階で発見さえできれば何とかなるという思いは持ち続けたいものです。

今時の「がん」

ここからは「がん情報サービス」さまの情報です。
詳しくはリンク先をご覧ください。

外部リンク がん情報サービス

外部リンク がん情報サービス「最新がん統計」

一生のうちに「がん」と診断される日本人は、男女とも2人に1人

「がん」で死亡する日本人は、男性が4人に1人、女性が6人に1人

ということは、「がん」と診断されても半数以上の方は快復しているということのようです。

私は自身の経験を通じて、会社の部下や友人に「健康診断の再検査・精密検査は必ず受けるように」と言い続けています。この記事をご覧いただいた皆様も、がんに負けることのないようお祈りいたします。